Salesforce社が掲げる「The Model」とは?
The Model(ザ・モデル)はセールスフォース・ジャパンで活用されてきた営業プロセスモデルです。マーケティング・インサイドセールス・外勤営業・カスタマーサクセスの一連のプロセスにおいて、各部門の情報を可視化・数値化し、それぞれの部門の特性や専門性を最大化することで生産性の最大化を図ります。
The Model 誕生の時代的背景
The Model 誕生の背景には、2点の時代変化があげられます。
- 購入検討の主導権が売る側から買う側へシフト。インターネットの発達などにより、営業が接点を持つ前に買う側自身が情報収集して評価するようになった。
- 買い切りのスタイルから、サブスクリプションなどの継続課金を前提する方式へシフト。顧客が成果を感じなければ契約終了となるため、導入後の顧客満足が重要となった。
こうした時代変化により、営業担当が顧客探しから交渉・クレーム対応までの全てのプロセスを担う事が難しくなりました。The Model は進捗の可視化、部門間の連携、契約後のフォローにより一貫した顧客満足を叶える仕組みです。
The Model の4つのプロセス
The Model の営業プロセスは「マーケティング」「インサイドセールス」「外勤営業」「カスタマーサクセス」の4段階に分けられます。各段階の評価指標を設定することで、営業活動が停滞している箇所を特定しやすくなり、効果的な改善策の立案に役立てます。さらに、部門間で指標や顧客情報を共有し、営業プロセスの一元化、売上や顧客満足度の向上につなげます。
- マーケティング
評価基準: (来訪者数)×(獲得率)=(見込客数)
従来のマーケティングにおいては顧客と営業の接点がスタートでしたが、今日では顧客は営業と接点を持つ前に情報収集の大部分を終えています。マーケティングプロセスをさらに分解すると、「認知拡大」「リード獲得」「リードの育成」となります。各ステージの定義や数値を可視化し、段階に応じた施策を講じる点がポイントです。 - インサイドセールス
評価基準: (見込客数)×(案件化率)=(案件数)
インサイドセールスの役割は、見込み客の育成(反響型インバウンド)と案件発掘(新規開拓型アウトバウンド)に大別されます。従来のテレアポ部門では見込み客リストに片っ端から電話するスタイルでした。現在はMA(マーケティングオートメーション)によって、営業が接点を持つ前段階の追跡や分析が自動的に行えるようになりました。MA導入による具体的な変化として、リードのスコアリングによる対応優先順位付け、リードフォローのタイミングの自動化、事前情報の収集があげられます。過去に失注したり、商談に至らなかったりした層を見込み客リストに再追加する、「リサイクルリード」の掘り起こしも可能となりました。 - 外勤営業
評価基準: (案件数)×(受注率)=(受注数)
従来の営業活動では早期に受注が見込める顧客の対応に終われ、新規開拓や既存顧客のフォローは困難でした。The Model は営業プロセスをフェーズごとに細分化、分業化し、外勤営業が商談に集中できる環境を生み出しました。プロセス管理のシステム化によって、売上予測精度の向上、ボトルネックの抽出、属人的な営業からの脱却をももたらしています。 - カスタマーサクセス
評価基準: (受注数)×(更新率)=(継続数)
カスタマーサクセスは活用支援と契約継続を担います。契約後のプロセスはテクニカルサポートだけではなく、導入支援や活用支援など多岐に渡ります。関連部門がシームレスに連携する点がポイントです。こうした一連の流れは従来の「カスタマーサポート」と区別し「カスタマーサクセス」と呼びます。顧客の成熟度に応じたサービスを提供することで、顧客満足度が向上し、ライセンスの追加やアップセル、クロスセルに寄与します。さらに、ユーザーコミュニティを構築することでユーザー同士のつながりを促進するほか、紹介案件にもつながります。
The Model 運用成功の4つのポイント
The Model の運用を開始する前に、失敗しやすいポイントとその対策を把握しておきましょう。
- 各部門の責任範囲と目標数値の明確化
The Model では、各部門のゴール数値が次の部門の母数となり、全ての数値が連鎖していきます。あらかじめ各部門の責任範囲と目標数値を明確化し、全部門で共有します。後の部門が前の部門のフィードバックを行い双方向の流れを生み出すことが運用成功のコツです。 - 各段階のKPIの明確化
KPIの設定目的は明確である必要があります。KPIをKGI達成のボトルネックに対して設定し、パフォーマンス改善の指標として検証します。検証を通じて新たなボトルネックが見つかった場合はKPIを柔軟に見直します。 - ルールの明確化
ルールが不明確な場合、必然的に数値も不正確となります。ルールを具体化、言語化し、全部門の共通認識とする点が重要です。指標に基づく判断基準の設定や、中長期トレンドの観察が主観によるぶれを抑制します。 - ツールの有効活用
The Model はSFA(営業支援)、MA(マーケティング自動化)、CRM(顧客関係管理)といった各種ツールの導入が前提となっています。人力の分析やレポート作成、情報共有ミーティングに時間と労力を割いていては本末転倒です。ツールを活用して業務の自動化、部門間の連携強化を図りましょう。
参考文献:Salesforce|The Model(ザ・モデル)とは?用語と営業プロセスをSalesforceが解説
まとめ
セールスフォース・ジャパンが活用してきたThe Model は部門を超えた分業化・連携・可視化につながります。
The Model を自社に合わせてカスタマイズし、顧客の成功と売上拡大につなげていただけましたら幸いです。